豚も人も同じ
前の更新から約9ヶ月。まあこうなるとは思ってたけど。
いったん熱が冷めて座り込むと、なかなか重い腰が上がらず
テコでも動かねえってんだから困ったもんでい。
これを機に更新していきます(ほんとかよ)。
さて、本題は「豚も人も同じ」という話。
6月29日、写真家 渡辺一城さんの写真展「豚」へ行ってきた。
写真展のタイトルが豚。すごい。
新潟の精肉店で生まれた渡辺さんは、幼い頃から豚肉が解体されるのを日常的に見てきた。
後に厚木にある写真の学校に進学し、その近くに養豚場があったことから豚と再会。
しかしそこで幼い頃から見てきた豚肉が、実は豚としてそこで生きているという当たり前のようなことを実感する。
それを機に豚の写真を撮り続けて10年になるということなのだけど、
豚が屠殺されたり加工される過程を公開すること自体がタブーとされてきたことで、
今回の写真展、それと同時に発売された写真集は極めて画期的なものらしい。
で、実際にいくつかの写真を観ての感想。
まず驚いたのは、豚の顔がどれも人間の顔に見えたということ。
(その瞬間を撮った渡辺さんもすごい。賞賛)
豚の写真なんだから、どこからどう観ても豚なんだけど、
例えば、屠殺された豚の魂の抜けたような虚ろな目とか、
見られていると胸が痛くなるような子豚の澄んだ瞳とか、
どれも人間にとてもよく似ていた。
特に交尾をしている雄豚の顔なんて人間のおっさんにしか見えなかった。
男性でもなくおじさんでもなく、おっさん。それがいちばん的確というぐらいおっさん顔。
「豚も人もたいして変わらないんだなあ」と、なんとも不思議な感覚になった。
次に、
渡辺さんご本人とのトークセッションの中で、写真集の最後の一枚が、
作業着である「つなぎ」が物干し竿に並んで吊るされている写真、という話題になったのだが、
渡辺さんはこの並んだ作業着を見た時に、頭や内蔵を切り落とされた豚が吊るされている「枝肉」と重なったという。
おそらく渡辺さんは「人間も豚と同じように、ああやって吊るされる側になっていたかもしれない。
食べる人間、食べられる豚、ちょっとした運命の違いで変わっていたかもしれない」と感じたんだと思う。
対極にあると思われていることも、実は表裏一体、紙一重。
津波で家を流されたり、内戦で大切な人を失ったりしたのは、自分だったかもしれないのだ。
で、この写真集だけど、1ページ目からいきなり血まみれの屠殺シーンで始まり、
さらに豚の写真が続くんだけど、突然人間のおばあさんが登場する。
しかも介護施設の一室のようなところで、車椅子に座りイチゴ?を頬張ってるシーン。
一見全く関係なさそうなこの写真なんだけど、これもまた不思議と豚の顔と重なって見えてくる。
もちろんおばあさんが豚に似てるなんてことじゃなくて、(まことに失礼ながら)何も考えずにただ目の前のイチゴを頬張る無垢な表情がなぜかそう思わせる。
ここでもまた豚と人は何ら変わりはないのだ、と感じさせられた。
写真展が「豚」で、写真集が「人」。
ほぼ豚で埋め尽くされたこの写真集のタイトルが「人」であることに強いメッセージを感じる。
渡辺さんは写真集の中でも、
「撮影を重ねて行くにつれて豚の営みの中に人の営みが見えてくるようになった」
「豚を育てること、殺すこと、食べること。全ては"人"がやっていることである」
と書いている。
日頃から当たり前のように口にしている豚肉。
ただ単に「命を大切に…」なんてところにとどまらず、豚を通して人間を見つめ直すきっかけを与えてくれるこの写真をぜひ観てほしいと思う。
それから写真集に興味がある方、もちろん買ってほしいんだけど、
みんなお金のないクソッタレなミュージシャンばかりだろうから、
ポテチ食べた手で触らないって約束してくれたら貸しますんで声かけて下さい。
渡辺一城 写真展 「豚」
B ギャラリー(ビームス ジャパン 6F / 新宿)TEL:03-5368-7309
2013年年6月15日(土)~7月4日(木)まで 11:00~20:00
http://www.beams.co.jp/news/detail/1823
いったん熱が冷めて座り込むと、なかなか重い腰が上がらず
テコでも動かねえってんだから困ったもんでい。
これを機に更新していきます(ほんとかよ)。
さて、本題は「豚も人も同じ」という話。
6月29日、写真家 渡辺一城さんの写真展「豚」へ行ってきた。
写真展のタイトルが豚。すごい。
新潟の精肉店で生まれた渡辺さんは、幼い頃から豚肉が解体されるのを日常的に見てきた。
後に厚木にある写真の学校に進学し、その近くに養豚場があったことから豚と再会。
しかしそこで幼い頃から見てきた豚肉が、実は豚としてそこで生きているという当たり前のようなことを実感する。
それを機に豚の写真を撮り続けて10年になるということなのだけど、
豚が屠殺されたり加工される過程を公開すること自体がタブーとされてきたことで、
今回の写真展、それと同時に発売された写真集は極めて画期的なものらしい。
で、実際にいくつかの写真を観ての感想。
まず驚いたのは、豚の顔がどれも人間の顔に見えたということ。
(その瞬間を撮った渡辺さんもすごい。賞賛)
豚の写真なんだから、どこからどう観ても豚なんだけど、
例えば、屠殺された豚の魂の抜けたような虚ろな目とか、
見られていると胸が痛くなるような子豚の澄んだ瞳とか、
どれも人間にとてもよく似ていた。
特に交尾をしている雄豚の顔なんて人間のおっさんにしか見えなかった。
男性でもなくおじさんでもなく、おっさん。それがいちばん的確というぐらいおっさん顔。
「豚も人もたいして変わらないんだなあ」と、なんとも不思議な感覚になった。
次に、
渡辺さんご本人とのトークセッションの中で、写真集の最後の一枚が、
作業着である「つなぎ」が物干し竿に並んで吊るされている写真、という話題になったのだが、
渡辺さんはこの並んだ作業着を見た時に、頭や内蔵を切り落とされた豚が吊るされている「枝肉」と重なったという。
おそらく渡辺さんは「人間も豚と同じように、ああやって吊るされる側になっていたかもしれない。
食べる人間、食べられる豚、ちょっとした運命の違いで変わっていたかもしれない」と感じたんだと思う。
対極にあると思われていることも、実は表裏一体、紙一重。
津波で家を流されたり、内戦で大切な人を失ったりしたのは、自分だったかもしれないのだ。
で、この写真集だけど、1ページ目からいきなり血まみれの屠殺シーンで始まり、
さらに豚の写真が続くんだけど、突然人間のおばあさんが登場する。
しかも介護施設の一室のようなところで、車椅子に座りイチゴ?を頬張ってるシーン。
一見全く関係なさそうなこの写真なんだけど、これもまた不思議と豚の顔と重なって見えてくる。
もちろんおばあさんが豚に似てるなんてことじゃなくて、(まことに失礼ながら)何も考えずにただ目の前のイチゴを頬張る無垢な表情がなぜかそう思わせる。
ここでもまた豚と人は何ら変わりはないのだ、と感じさせられた。
写真展が「豚」で、写真集が「人」。
ほぼ豚で埋め尽くされたこの写真集のタイトルが「人」であることに強いメッセージを感じる。
渡辺さんは写真集の中でも、
「撮影を重ねて行くにつれて豚の営みの中に人の営みが見えてくるようになった」
「豚を育てること、殺すこと、食べること。全ては"人"がやっていることである」
と書いている。
日頃から当たり前のように口にしている豚肉。
ただ単に「命を大切に…」なんてところにとどまらず、豚を通して人間を見つめ直すきっかけを与えてくれるこの写真をぜひ観てほしいと思う。
それから写真集に興味がある方、もちろん買ってほしいんだけど、
みんなお金のないクソッタレなミュージシャンばかりだろうから、
ポテチ食べた手で触らないって約束してくれたら貸しますんで声かけて下さい。
渡辺一城 写真展 「豚」
B ギャラリー(ビームス ジャパン 6F / 新宿)TEL:03-5368-7309
2013年年6月15日(土)~7月4日(木)まで 11:00~20:00
http://www.beams.co.jp/news/detail/1823
by last12continuum
| 2013-07-02 04:43
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